オープンイノベーション事例 オムロン株式会社 | conect+

オープンイノベーション事例 オムロン株式会社

IoTで社会の課題に向き合っている企業と協業することに意義がある。

ヘルスケア製品で有名なオムロン。しかし、一般にはあまり知られていませんが、オムロンのメイン事業はファクトリーオートメーション。さまざまな制御機器などを製作しています。

「製品に組み込まれている“センサ”などの自社製品が、社会課題の解決に向けて挑戦しているベンチャー企業の役に立てないだろうか?」という想いから支援する体制を整備。

2018年から新設されたオムロン全社のイノベーションプラットフォームであるイノベーション推進本部を活用する形でチームが発足。

「Groveコネクタ付き*1  絶対圧センサ」「Groveコネクタ付き 非接触温度センサ」「Groveコネクタ付き 感震センサ」の3つのセンサをリリース。

企業だけでなく個人でも活用できる取り組みを行っています。conect+はこのオムロンと協業し、IoTの推進に向けて貢献しています。

オムロン株式会社
イノベーション推進本部 CTO室 戦略グループ
主査 髙塚皓正 様(写真右)
小島有貴 様(写真左)

他社とコラボレーションしながら社会課題を解決する

─まずは、オムロンのご紹介からお願いします。

髙塚:オムロンといえば一般的には体温計などのヘルスケアで有名だと思いますが、事業のメインはファクトリーオートメーション。つまり、工場内の生産設備を計測する機器やPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)と呼ばれる制御機器です。あまり知られていませんが、B2CよりB2Bの方のウェイトが大きいんです。
また、オムロンでは「センシング & コントロール + Think」を掲げています。これは我々のセンシング(計測)技術とコントロール(制御)技術にシンク(⾃ら考える)をプラスすることをコアコンピタンスとしたもので、最近ではAIでシンクの領域を強化しようとしています。

小島:補足すると、オムロンは「ファクトリーオートメーション」「ヘルスケア」「モビリティ」「エネルギー・マネジメント」の4つを事業ドメインとしており、「ヘルスケア」は全体の2割ほどです。約半分を占めるのが「ファクトリーオートメーション」。
「モビリティ」関連の製品としては、自動車のパワーウィンドウを開けるスイッチや、車間距離を測るセンサ、自動改札などがあります。この自動改札は1967年に世界初の無人駅システムとしてオムロンが開発した歴史があります。

─オムロンといえば、ヘルスケア製品の印象が強かったです。そのなかで、イノベーション推進本部はどのようなことをミッションとしているのでしょうか?

髙塚:イノベーション推進本部は、2018年4月に発足したばかりの部署です。我々は「イノベーションのプラットフォーム」という言い方をしていますが、イノベーション推進本部に属する約50名が核となり、オムロン全体でイノベーションを起こそうとしています。

小島:世の中の変化を見た場合、いまあるオムロンの4つの事業ドメインには当てはまらない領域が生まれています。我々が社会課題を解決したくとも、事業ドメインの括りから難しいこともありました。しかし、イノベーション推進本部ができたことで垣根を越えて取り組むことができるようになりました。
髙塚:我々が得た新しい情報は各ドメインにフィードバックしていますし、場合によっては第5、第6のドメインを作ることもあり得ます。

そのなかでさらにCTO室 戦略グループとは?

髙塚:CTO室 戦略グループではプロジェクトチーム体制を取っており、複数のプロジェクトが同時進行しています。そのなかで我々はIoTプロジェクトにアサインされています。

─IoTに注目している理由を教えてください。

髙塚:今、さまざまなムーブメントが起きています。本来、産業向けに提供されているセンサが、生活に密着した分野でも活用されるようになりました。オムロンが製作しているセンサも、「別の用途でも使えるかもしれないから試してみたい」といったお話を聞くようになりました。

─センサにはどのようなものがありますか?

小島:例えば、IR(赤外線)センサはエアコンに取り付けられていて、人を見つけて室内の温度調節をします。また、スマホには歩いた距離がわかるセンサが取り付けられています。

髙塚:ただ、我々が製作しているのは組み込むセンサの“チップ”でしなく、取れるデータも数字の羅列でしかありません。試してみるにしてもチップ単体では何もできないという課題がありました。

─自社で製作しているセンサを広く活用して欲しいと思われたということですね。

髙塚:そうです。昨今のオープンプラットフォームやエコシステムの流れで解るように、自社だけで社会課題に取り組むのでなく、他社とコラボレーションすることによって解決策を模索する時代です。オムロンとしてそういった文脈のなかで社会貢献できるのではないかと考えました。

小島:我々は元々、B2Bで特定の会社向けのセンサを得意としていました。例えば、高低差±5cmの気圧を計れるセンサがありますが、このセンサを使って世の中を変えたいとベンチャーさんが考えたとしても、センサのチップを製品に組み込み、使えるようにするにはハードルが高すぎたんです。

製品をまずは使ってもらい、解決策を一緒に考える

─今、取り組んでいる製品について教えてください。

髙塚:社会課題の解決に向けて挑戦しているベンチャー企業などが、新規IoTビジネスを探索していただくために、Arduino/Raspberry Pi/Tinker Board*2のDIYオープンプラットフォームに対応した製品を用意しました。それが、「Groveコネクタ付き 絶対圧センサ」「Groveコネクタ付き 非接触温度センサ」「Groveコネクタ付き 感震センサ」の3種です。これらは、従来からあるセンサで家電やカメラ、自動車などに組み込まれて使われていたものです。
例えば感震センサはガスメーターなどに取り付けられており、地震が起きたとき、感知して遮断します。それをRaspberry Piなどにも対応させることで、ITベンダーやスタートアップ、個人でも活用できるようにしました。
専門開発、大量生産、低コストという高く評価いただいているオムロンのビジネスは継続しつつ、連携を求めているところに対して提供することを目的としたプロジェクトです。また、接続や操作もサポートしています。

─大企業だけでなく、ベンチャーや個人も無視できない、ということですね。

髙塚:そうです。 実際にこのGroveコネクタ付きセンサ自体も、ハードウェアベンチャーや、個人モノづくりをする方々ともコラボレーションして開発しています。ただし、我々としてはそこが大きな市場になるかはまだ手探りの状態です。
しかし、まずはそんなニーズと対話ができるところまで持ってかなければなりませんし、そのためにリスクを取ってみないとわかりません。

─これはどのように活用できるのでしょうか?

髙塚:私たちからの使い方提案では発想に限界があります。そのため、まず、使ってもらい、一緒に考えることを軸に置いています。今回、リリースした3種類は、比較的問い合わせの多かったものを選びました。特に絶対圧のセンサで高さを測る、というのはインパクトがあるようで、「試してみたい」という要望を多くいただきました。

─接続や操作もサポートとはどのようなことでしょうか?

小島:センサからデータを取ること自体も実は難しさがあります。
我々としてはきちんとデータを取ってきてすぐに使えるものを準備すべきだと考え、GitHub*3にOMRON Developers Hubを作り、簡単にデータを取ってこれる環境を作りました。

髙塚:なので、コネクターでRaspberry Piなどでつないでいただいて、OMRON Developers Hubからソフトをダウロードしたら簡単にデータが見えますよ、というところまでは準備してあります。

─どのようなところから使いたいという話があるのでしょうか?

髙塚:いくつかは出てきています。例えば、ドアの開閉が圧力で測れるんじゃないかとか、地震が起きたとき、飼っている魚が心配だから、水槽がどれくらい揺れたのかを測りたいという話もあります。

小島:温度センサで火の消し忘れを検出できないか、という話もあります。

髙塚:そのようなアイデアは自分たちではなかなか思いつきません。お客様から伺うことで驚きがあります。

─どのようなところから使いたいという話があるのでしょうか?

髙塚:いくつかは出てきています。例えば、ドアの開閉が圧力で測れるんじゃないかとか、地震が起きたとき、飼っている魚が心配だから、水槽がどれくらい揺れたのかを測りたいという話もあります。

小島:温度センサで火の消し忘れを検出できないか、という話もあります。

髙塚:そのようなアイデアは自分たちではなかなか思いつきません。お客様から伺うことで驚きがあります。

「conect+」は社会に向き合っている

─「conect+」と協業した理由を教えてください。

小島:展示会で出会ったのが最初なのですが、「conect+」はエンドユーザーにとって、どうすれば使いやすいか、ということに関してすごく作り込まれている商品です。私がクオリティの高さに惚れ込み、私の方から「ぜひ、お話をさせてください」と言ってスタートしました。
まず、オムロンの「環境センサ」に対応したものを早くに作ってくれました。課題解決への取り組みを一緒に進めさせてもらっています。

─その「環境センサ」を教えてください。

髙塚:電池駆動で電源不要。Bluetooth low energyといった無線で接続できます。そのため、スマホやゲートに簡単につながるインターフェースになっています。 温度、湿度、気圧、音圧、加速度、照度、UVや騒音を測ることで赤ちゃんや老親のベットの見守り、家庭やオフィスの環境維持、工場の作業環境の適正化、熱中症の注意などに活用できます。複合センサである、というところが強みです。

小島:熱中症指数、不快指数などもセンサ本体で計算してくれます。住宅のハウスメーカーさんが興味を示していただいていますし、工場で働く方の見守り、海の家のIoTの企画で使われたという話も聞いています。あと、オフィスの可視化として採用されてもいます。様々な用途に活用頂いています。

髙塚:身に付けて歩くハンドバッグ型のものと、室内で使うUSB型のものがあり、用途に合わせて選ぶことができます。今はオムロンのロゴが入っていますが、規模によっては導入いただいた先が希望する形やロゴにすることはできます。あと、なかの基板提供も可能です。さらに、「conect+」と連携することでデータが可視化できます。

─「conect+」と協業するメリットを教えてください。

髙塚:オムロンだと稟議を通して社内調整をしないとできないことがたくさんあります。でも、「conect+」はフットワークが軽く、私たちができないことをやってくれます。それに社会の課題に向き合っている会社だと思います。

小島:オムロンとはお客様が違うこともメリットとしてあります。オムロンのセンサを知らない企業は「conect+」を介して知ってもらえる。もちろ、その逆もあり人脈が広がります。一般的なオープンイノベーションのメリットではありますが、それは実感として感じます。

─協業することでの不安はありませんか?

髙塚:我々にはありませんが、もしかすると上司などに不安があるかもしれない。そういったことがあれば、我々が間に立ってコミュニケーションする。
それは我々の仕事です。実績ができることで変わって行くとも思います。ただし、協業を不安と感じている時代ではもはやないと思います。

─今後、IoTは伸びて行くでしょうか?

髙塚:我々はそう、思っています。ただ、私たちはスタートしたばかりなので、これからです。IoT市場が伸びて行けば投資をする意味も分かりやすくなります。今後、さらにIoT市場を注視する必要があると考えています。

小島:まだIoTはバズワードみたいなところが若干あります。なんにでもIoTをつけてみたり・・・・・・。
でも、その分、すごい可能性を秘めているとも言えます。今後はエンドユーザーに関わるさまざまな課題がIoTで解決されて行くのだろうと予想しています。実は「conect+」の考え方はそこに近いと思っていて、「conect+」はエンドユーザーが触れるIoTの世界を作ろうとしていることをとても感じます。
我々が作っている製品ひとつを見ると、とても小さいですが、世の中の課題を大きく解決できる製品だと信じています。それを「conect+」と一緒に解決して行きたいと思っています。

─最後に今後の取り組みを教えてください。

髙塚:他のセンサに対応していく予定です。それを「conect+」との協業等で活用していただいて課題解決のためのビジネスにつなげていって欲しいと思っています。
また、今はまだ、センサは3つですが、もっとたくさんあります。今回、足りないものが見えてきたので、製品を増やして行くことを考えています。あと、お客様にソリューションを提案するところまではできていないので、それが今後のテーマです。

小島:成功事例を作ることです。まず、実際に課題が解決できたということを提示しなければなりません。それは我々だけでできることではないので、ぜひとも「conect+」にも協力していだたきたいところです。

─ありがとうございました。

*1 Grove:Seeed社が開発しているコネクタを差すだけで扱えるセンサーモジュール
*2 Arduino、Raspberry Pi、Thinker Board:IoTのプロトタイピング開発等で使用されるマイクロコントローラ、シングルボードコンピュータの製品名
*3 GitHub:GitHub社が運営する、ソフトウェア開発のプラットフォームであり、自分のプログラムコードやデザインデータなどを保存、公開することができるウェブサービス

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